
時は1995年、ここは香港シェラトンタワーズジュニアスイート。
welcameシャンパンにフルーツが用意された香港の100万ドルの夜景が広がるシェラトンタワーズ上層階の部屋。
ナザレは起業の準備をする中で知り合った台湾華僑のTさんとミーティングをするためと今後の中国ビジネスについての可能性を模索するためにひとりでここに来た。
パワー溢れるビジネスウーマンのTさんが全て準備するから、とにかく香港に来なさいとのことで、それは何ひとつ計画を持たない成り行き次第のアドベンチャーな旅だった。
ただひとつ、Tさんにリクエストしたのは、宿泊先はペニンシュラーホテル香港。
しかし、香港国際空港で迎えの車が向かった先はペニンシュラーの向かいのシェラトンタワーズ香港だった。
ホテルにチェックインし、上層階にある部屋の窓から景色を眺めるとその理由が理解できた。
誠に残念なことにペニンシュラーは改装工事の為、全館休業中だった。
午後には、ミーティングを兼ねたスカイラウンジで立ち並ぶ香港のビル群と街並みのパノラマを臨むアフタヌーンティ。
うっとりするようなイギリスの古き佳き習慣と文化が漂うスカイラウンジのエレガントな空間。
香港の街は凝縮されたエネルギッシュな中国、ホテルの中は、古き佳きイギリス。
夜になり、ひと仕事を終え、ホテルの部屋に帰ると、そこには、まるで宝石箱をひっくり返したような100万ドルの夜景が広がり、ふと神戸にいるような不思議な気分になる。そして、ビルの上に立ち並ぶ日本企業のネオンの看板に先人達へ敬意を払うとともに、日本人であることに誇りと勇気を持った。
昼は街のレストランで飲茶。
その夜、Tさんがお嬢さんと一緒に香港島のレストランに招待してくださり、広東料理をいただく。
大きな銀の器に入ったスープが丁寧に運ばれた。それが取り分けられ、最高のおもてなし料理の最高の部位をあなたに、とのことだった。
最高の部位とな何ですか?と尋ねると蛇のお頭とのことで苦笑いを超えて言葉が出てこない。
香港、台湾、南京、日本を行き来する経営者Tさん
彼女の漲るパワーと行動力に感化されつつ、中国とイギリスの文化が凝縮され交じり合う香港にこれからの中国が向かう姿を見ることになった、起業直前、ナザレ28歳の旅だった。
Tさんには、女性企業家の言葉が似合わない。
彼女のパワーと堂々たる姿から、人として仕事をし、甘えがない姿勢を学んだ。
そして、次回は南京で会う約束をして、香港を後にした。