埠頭を渡る風とUFOからのサイン

アタックナンバーワンに憧れていたナザレは
中学に入り、バレーポール部に入りクラブ活動、
陸上部の大会時の助っ人選手、画策、ピアノ演奏、
生徒会活動と夢中で毎日を過ごしていた。
当時ナザレの身長は158cm、
同じチームのアタッカー達の身長は165cm以上。
ナザレは、8cmの差を超え、10cm高く飛べる
ようになれば良いだけだと思っていた。
人知れず努力することが大好きなナザレは、毎朝
5kmのランニングを続け、その成果により、
垂直飛びで50cmを跳ぶことができる。
100m走も陸上部員よりも早く走ることができる。
そこで、陸上部から大会の時だけの助っ人の
部員の招待を受けるようになった。
ナザレは、普通なら共存できそうにもないことも
なぜか興味があることは全力で突進する子供だった。
入学後すぐに友達になった神戸から転校してきた
ともちゃんから、2年生の夏休みにポートピア博覧会に
一緒に行こうと誘われた。
神戸っ子のともちゃんには、実の娘のように
可愛がられている叔母さんご夫婦がいて
2泊3日でお友達を連れてポートピア81に
いらっしゃいとのことだった。
そして、いつもの仲良し4人組で初めての神戸に
着いたナザレが見た街並みがナザレの人生を
駆り立ていくことになる。
ポートタワー、ポートアイランド、北野異人館街、
花時計、旧居留地 港町神戸。
何よりも魅せられたのは、美しい港町神戸のきらめく
夜景に埠頭と潮風。
サーファーカットに当時トレンドのハマトラファッ
ションを身にまとい大学生になった気分で存分に
神戸の街を楽しんだナザレは、
ユーミンの「埠頭を渡る風」の風景の中にたって、
神戸の大学に進学して、この街で住むと決めた。
このポートピア81の旅は、間違いなくナザレの冒険の
第一歩となった。
そして、15歳になったナザレに突然その日がやってきた。
クラブ活動の帰り道の夕暮れに、3機のUFOが現れ
上空の視界いっぱいで見事な航空ショウが繰り広げ
られた。何度も何度もワープしては右の山並みで消え
左の山並みから現れそれをランダムに繰り返し、
時には山の頂上をクルクルと周り、まるで
遊んでいるように不思議な空路で飛行を続けるUFO達。
ナザレはすっかり時を忘れ、暗くなるまで未知の
航空ショウを観ていた。 しかしそれは、
少女から大人になって行くナザレへの魂の家族、
UFOからの暫しのお別れのサインだったことを後で
気付くことになった。